2019.7.10 赤い彗星

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娘さんの靴が隠されています。

学校から連絡が入ったのが6月。

 

娘からちらっと聞いていた。

違う人の靴箱に自分の靴が入っていたり

別の場所に持ち物が移動していることがあると。

誰がやってるのかわかっていて

本人は気にしてない。

わたしは

仲のいい男子のからかいか、と思ってた。

 

が、先生から話を聞けばもっと事態は深刻。

実は嫌がらせはもう1か月も続いていて

聞き取り調査の結果を聞けば、

からかいなどではなく、

我が子不憫で胸が痛むこと多々、そして

私は許しても周りは許さない、

本人の出来不出来をはっきりと聞かされる。

10年前の長女の時の子育てよりも

子ども同士の中で寛容さがないのを忘れていた。

 

いつかはと予想していたが、今来たか。

と、腹に重たいものが入った。

 

本人も知らなかった、嫌がらせの全てを

本人に話す。

そして周囲がどう思ってるかも全て話す。

まじかーそこまでかーと、受け止める本人。

伝えるのは辛かったが、

しらないままにもしておけない。

そして、気づかないできたことにも

ほんの少しウケた。

 

 

先生は、クラスで話し合いをして

ここで根絶やしをしたい、

そのため、お子さんの名前をクラスで出していいかと。

先生からは、その場でもこれからも

全力で娘を守りたいという意志が感じられた。

そしてクラスの生徒を正しい方向に導く決意も。

それはありがたかった。

 

だけど、何か引っかかる。

クラスのみんなの前で、先生にかばわれて

背中を小さくする娘。

ただ守られるだけの存在でしかないと感じながら

自分のことなのに、自分以外のひとの言葉が飛び交うのを聞くのか。

 

 

娘と話した。

初めて娘と真剣に話したかもしれない。

まっすぐ目を見て聞いた。

あなたはどうしたい?

 

しばらくして、

被害者扱いだけは嫌だと彼女が言った。

 

だとしたら、自分の言葉でみんなに向かって話してみるか?

まっすぐに。自分の気持ちを。

先生じゃなくてあなたが。

 

娘はかなり考えて、目に涙をためて答えた。

「言ってみる。怖いけど言ってみる」

 

 

そのあと娘に、自分の気持ちを話した。

去年も娘はクラスのひとりの男子に毎日罵倒されていて

それがきっかけというわけではなかったけれど

少し学校に行けなくなり、

おさななじみたちとも遊べなくなった。

遊べないというよりも、関係が少しずつ変わってくのに

ついていけなくなったんだと思う。

なんとなく入っていけなくなったことを

認めることもできなくて、考えるのも対処するのもやめて

ただただ二次元や漫画で緩和して

一人で過ごすようになった。

 

時々、クラスのお友達のおうちで遊びに連れてってくれた。

週に一度のバトンでは、

新しくチームに入ってなじめない子を率先して仲間に入れたり

いじけやすい子のそばにいたり、

みんなの輪を保ち、楽しく過ごすようになっていった。

 

 

そんな一年が過ぎ、わたしの心もだいぶ落ち着いたころ

突如、剣道をやると言い出した。

新しくクラスメイトになった子がやっている部活を見に行ったら、

どうしてもやってみたくなったと。

 

運動嫌いなのに、と、こちらは腰が抜けるほど驚いた。

ママ友恐怖症から抜け出せないわたしは、

正直、スポ少だけは勘弁してほしいと思っていたけど

ひとりでダラダラこもる姿を一年見続けたあとだけに

両手あげて賛成した。

 

だから、

お母さんはその時思ったよ。

あなたのなかに、これから目覚めてく

ほんとのあなたがいるんだと。

一年間、逃げて逃げて、だけどそれじゃいけないって

自分で自分を見つけ出そうって

動き出したんだなって。

そして剣道部に入ってすぐに、あなたが言った。

おじいちゃん先生がすごく厳しくて、

でもその先生の中にある「何かに認められたい」って。

そういうものが、これからあなたの柱になっていくんだなって。

今はダメダメでも、そこには程遠くても

自分でこれだったんだ‼って思うものに出会えたんだって。

そんな自分になるために、今回勇気出してみるのは

とても大事だと思う。

勇気があったなら、本当はどうするか。

そういう自分になったつもりで行動してみて。

裏にあるものならば、表にだしてみんなにも考えてもらって。

誰か一人でもかならず、その勇気に心動くひとがいるかもしれない。

 

 

嫌がらせを受けていたこと

嫌がらせを受けるのは嫌だということ

嫌がらせを受けるだけの何かが自分にはあるのだと思うこと

でもそれは直していく、私は変わる

だからみんなも変わってください

わたしのダメなところだけ見るのはやめて

良いところもみてください。

わたしは剣道を頑張っています。

 

 

彼女が伝えたのはこれだった。

 

 

少し味方が増えた。

目に見える悪質ないやがらせは消えた。

でも、何もかも解決したわけじゃない。

相変わらずなんとなく避けられたり

ついていけてなかったり。

 

だけど、うちらは

この問題を1週間で腑に落とした。

下手したら、このあと何か月も

もしかしたら一生引っ張ったかもしれないものを。

 

それでも、みんなの前で話したあとの娘、

平気な顔して一週間過ごして、そのあと

バトンでできない技ががあり悔しいと涙こぼし始めたら

止まらなくなって、えんえんと泣いていた。

そして最後に、

ああそうか、わたし本当は傷ついてたんだなあ。

と言った。

 

そうだね。やっと泣けて良かったね。

ちゃんと自分の気持ち、わかれてよかったね。

これで終われるね。

よかった。

 

と、わたしは言って。

 

 

嫌なことはまだまだ続いてるけれど

そんなことより

部活の初大会のことで大騒ぎ。

 

チームの仲間のやさしさ、先輩たちの心のまっすぐさ

みんなが自分を育てるために頑張ってる空気、

見守る父兄、コーチたちの姿…

 

ここがあるから、負けないでいられる、と。

 

ちゃんとした礼をもって人と闘う、

相手の懐を借りて真剣に向き合って、

自分を鍛えさせてもらえる、

そんなものに巡り合えて、

何がいいことで悪いことなのか、

よくわかれた気がする、と。

 

試合は命がワクワクする。

 

それでも3試合目でコテンパンにやられ嗚咽。

それを先鋒の男の子が、一心に慰めてくれていて

本当に感謝の想いしかなかった。

ありがとう。

 

 

今日も部活を頑張っていた彼女。

宿題も部活前に終わらせて、ドヤ顔。

ほんとうは月曜日にまた悲しいことあったけど

ちゃんと前見ている様子に胸打たれ

食べたがってたラーメン屋に連れていく。

 

こないだまでは、一杯食べるのも大変だったのに

大盛ラーメンをぺろりとたいあげて

笑ってしまうと同時に、

いつの間にか、大きくなってしまったなという

一抹の寂しさ。

 

帰りの車で娘がいった。

 

お母さん、わがまま聞いてくれてありがとう。

ごめんね。ラーメン。ありがとう。

 

ラーメンぐらい、

ラーメンぐらい、

ラーメンぐらい。

 

何杯も食わせてやるし。

 

負けるな。

負けるな。

 

負けない。

負けないんだよ。

 

自分に負けたりなんかしないんだ。

いいものも、そうでないものも学校にはあふれてる。

それは社会も同じだ。

 

誰のせいにもしないで、

今見つめてるものだけを追いかけて歩いていこう。

きっと、あなたらしい花は咲く。

必ずそうだから。

お母さんにそれを見せてね。

 

誰が笑っても、お母さんは素敵だなってきっと思うから。