お客様のこと

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生前の、その人らしい笑顔を

ということをコンセプトに

遺影写真撮影をひっそりとやってきて、

 

いつかそんな日が来るかもと思っていたけれど

初めて撮らせていただいたお客様が

先週、永眠された。

 

娘さんから電話をもらった。

 

母を知っている人みんなが写真を見て

母の笑顔を見て喜んでいた、

ありがとう、と。

 

撮影のとき

とても恥ずかしそうで

最初は黙り込んでいたけど

 

外に出て二人きりになると

ぽつぽつ、自分のことを話しだして

自分のことなんてずっと後回しにしてきて

人としゃべんねーで、畑ばっかりで

イヤリングなんてつけだごどもねくて

はずがしなあ

 

そう言いながらも

「こうやって笑ってください」って

私が彼女に向かって見せるその表情を見ると

彼女は何度も噴き出す

そんなにおかしな顔だったのだろうか…

わたしの笑い顔がツボなのは少々心外だったが…

笑顔を見るのが嬉しくて、

喜んでくれるのがうれしくて

何度もやって

何枚も撮った

 

 

 

こんなに笑ったの久しぶりだなあと

彼女は言いながら、あたりを見回し

写真を撮らせていただいた男鹿の「あじさい寺」の

境内の菩薩様かお地蔵様…か…を見つけた瞬間、

すっと駆け寄った。

そして、手を合わせ深深と頭を下げた。

 

その瞬間の澄み切った目がとても印象に残っている。

 

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人が踏み込めない、その人の歩いてきた道のり

 

何気ない瞬間の

 

 

この日以来、お会いしてない

一期一会でしたが

 

ほんのすこしだけ

わたしは、一生懸命祈るように働いて生きてきた

あなたの中の不器用な純粋さを感じた気がします

 

お疲れさまでした

 

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